かくかくしかじか

かくコト、かくモノ

男前な「硯」、美人な「硯」って?

「硯」の個性は十人十色

羅文硯と墨床、水差し

細羅文硯(7吋、男前?)と、墨(2丁)

私は通販でも書道用品をよく買いますが、硯だけは、書道用品店で選んだ方が納得のいくものが手に入ると思っています。硯自体に、色々な個性や個体差があるからです。

男前/美人な硯

私は硯を買う時、以下の「良い点」(男前/美人ポイント)がどれだけあるかで選んでいます。でも、全部をクリアしている硯は、見つけるのがなかなか難しいです。

  • 硯の「縁の太さ」が左右対称。上下左右の縁の太さも、全体的にバランスが取れている。
  • 「縁の側面」(外側と内側)が平行に削られているので、「縁の上面の幅」も平行。
  • 「墨堂」(墨をする部分)が平ら。
  • 墨堂と墨池(墨をためる部分)との「境目の形」が、左右対称で、きれいな曲線を描いている。
  • 墨堂と墨池の「境目の傾斜」が程よくなだらかで、墨を墨池から墨堂に引き上げる時にストレスを感じない。
  • 硯の裏側が平ら。

ダメ男くん/ダメ子ちゃんな硯

店頭でじっくり選んだはずのものでも、実際に使ってみると、下記のような「マイナスな点」(ダメ男/ダメ子ポイント)のどれかが当てはまることがよくあります。

上記のリストの逆バージョンですが、こっちの方が表現がダイレクトで、分かりやすいかもしれません(硯をお持ちの方なら、「あるある!」とうなずいていただけるかも?)。

  • 硯の「縁の太さ」が左右で違っていたり、上が太すぎたり、下が細すぎたりする。全体的に見るとバランスが悪い。
  • 「縁の側面」が斜めに削られていて、「縁の上面」も平行でなく斜め。
  • 「墨堂」があまり平らでなく、墨をするとき僅かに凸凹を感じる。
  • 墨堂と墨池の「境目の形」が、左右対称でなく、ガタガタしている。
  • 墨堂と墨池の「境目の傾斜」が急すぎて、墨を墨池から墨堂に引き上げる時に引っかかりを感じる。
  • 硯の裏側が平らでなく、墨をする時にカタカタ音がする。

本当はダメな子じゃないかも?

しかし、多少マイナスな部分があっても、その価格に見合った全体的なバランスが取れているなら、そんなに気にすることはないのかもしれません。底にガタツキがあっても、下に布を敷くか大きな下敷きの上に置けば、ある程度は解決しますし。

あるいは「ダメな子ほど可愛い」という硯もあるかもしれません。いい具合にバランスが崩れているとか、見た目は美しいけど、ちょっとダメポイントがあるとか。使っていくうちに愛着が湧いてくるといいですね。

私の硯たちの場合...

私の硯と墨

硯と墨は、モニター台の下にプラケースで収納。

カットしたゴムシートをクッションに。

墨をする時に敷くと、ガタつき防止にも。

通常の書道の硯(かな用でないもの)は、最初は家にあったものを使用していましたが、ちょっと狭いなと感じ始めた頃に、7吋 (18cm × 12cm) のものを2つ買い足しました。かな用の硯は、最初にかな書道を始めてみた時に買った、四二寸(12cm × 6cm)のものです。

細羅紋硯(写真右)— 男前の職人さんみたいに、良い仕事をしてくれます

都内の専門店で買いました。羅紋硯は、初心者向けといわれ、7吋でも2000円前後で買える安価なものですが、墨おりが良く(早くすれて)、初級以上の方にも人気の硯のようです。

男前なところ(良い点)は、縁の太さが均一で、墨堂も平ら。墨地と墨地の境目も形が良く、傾斜もなだらかで、墨を落としたり引き上げたりする時のストレスがない。底も平らでガタツキがない。

ダメ男くんなところ(マイナスな点)は、今では特に見当たらないのですが、買った当初は小傷が多くて、粉吹き芋みたいでした。でも、タミヤコンパウンドの細目で磨いたら、ほとんど目立たなくなりました(ニキビが治った青年みたい?)。

注意:「コンパウンドで磨く」という方法は、今回は成功しましたが、硯によって石の質がそれぞれ違うので「全ての硯に向くとは限りません」。やってみたい方は「自己責任」ということでお願いします。裏側など目立たない場所で少しだけ試し、かえって傷が付くという場合は、中止するか、もっと目が細かいものを試すなどしてください。

端渓硯 新坑仔岩(写真中)— ちょっとダメ子? でも美人だから許してしまう

都内の割引率の高い書道用品店で見かけ、端渓硯にしては比較的安く、石の景色(景色)も美しかったので、少し無理をして買ってしまいました。

美人なところ(良い点)は、石目が細かいのに墨がおりやすく、縁の太さも均一。景色が美しいので、ただ眺めているだけでも癒やされる。

ダメ子ちゃんなところ(マイナスな点)は、墨をすると、墨堂に微妙な凹凸を感じる(買う際に手で触ったら平らだと思ったのですが)。縁の仕上げで、ちょっと雑な部分がある。底も一部が平らでなく、墨をする時に少しカタカタ音がする(下に布かゴムシート等を敷くと大丈夫)。

買う時、陳列台にフェルトが敷いてあって、硯の底が平らかどうかが分かりづらかったのですが、今思えば、店員さんに頼んで平らなところでチェックさせてもらえば良かったです。

でも、在庫を聞いたら2つだけで、もう一方は、石の景色があまり自分好みではなく、こちらを買って帰って良かったのだと思います。美しい景色の硯に出会うのって、一期一会でもありますから。

先ほどの細羅紋硯は機械彫りですが、この端渓硯の方は手彫りのようです。7吋くらいの大きめのサイズだと、手彫りで平らな面を仕上げるのには、相応の技術がいるのかもしれません。

良いものを買おうとすると、それなりの値段になってしまうので、今の私に見合う「ほどほどの美人」をお迎えした、といったところでしょうか。

かな用の硯(写真左)— 美人だけど、座布団がないと不機嫌なお嬢さま

地元の書道用品店で買いました。確か3千円台半ばだったと思います。

美人なところは、縁の曲線が美しく、太さも左右対称でバランスが良い。墨堂も平らだし、墨堂と墨池の境目も形が良くて滑らか。

ダメ子ちゃんなところは、小さい硯なのに、底の仕上げが若干平らでなく、敷物がないとカタカタ音がする。まるで、「私は、固いところにはずっと座っていられないの、座布団を敷いてちょうだい」と文句を言われているみたい?

お店に置いてある在庫の中で、一番良いと思われるものを選んで買ったのですが、これくらいの価格(3千円台)だと「普通の品質」なのでしょうか。でもこの硯を買ったのは最初にかな書道を始めたばかりの頃で、この金額でも高いなあと思っていました。他にも揃えたい道具も色々ありましたし。

かな書道では広い下敷きを使い、硯も一緒に載せているので、今のところ、お嬢様のご機嫌はよろしいようです。笑

硯の性別って?

男前/美人などの表現は、私の直感で決めたもので、あまり深い意味はございません。羅紋硯でも女性(または、オネエ)的なものがあるかもしれず、そんな硯をお迎えした時には、またご報告させていただきたいと思います。(出会ってみたいけど、本当にあるかしら?)