かくかくしかじか

かくコト、かくモノ

つけぺん(2) - 墨汁と使いやすい容器

墨汁やペンの容器

目次

  1. ペン習字のつけペンを「墨汁」で書き始めました
  2. 「膠製」の墨汁は書きやすいけど、傷みが早い
    原因は「たん白質の加水分解」
    「合成樹脂製」の墨汁を使ってみたけれど
     参考:カリグラフィーなら合成樹脂でもOK
    あえて「膠製の墨汁」を選ぶ理由
  3. 墨汁の鮮度を保つ工夫
    墨汁を少量ずつ使うための「インク壺」
     キャニスターの本体は「ペン先クリーナー」に
    墨汁の鮮度を保つ容器
     キャップ付きアルミ袋
     スポイト付きインクボトル

1. ペン習字のつけペンを「墨汁」で書き始めました

ペン習字をつけペンで書き始めた頃、色々なインクや墨汁を試してみたのですが、膠製の「開明 ペン習字用墨汁」は伸びがよく、匂いも自然なので、これでしばらく書いてみることにしました。


2. 「膠製」の墨汁は書きやすいけど、傷みが早い

「ペン習字用墨汁」をしばらく使っていると、書き味がだんだん渋くなってきて、乾燥したせいかなと水を加えたり、新しいボトルから墨汁を継ぎ足したりしてみたのですが、あまり改善しません。

思い切って古いボトルを処分して、新しいものに変えたら、以前と同じようにスラスラと書けたので、どうやら墨汁が傷んでいたようです。


原因は「たん白質の加水分解

調べてみると、膠はたん白質で、時間とともに加水分解が進むことが分かりました。書道の墨の場合、磨ってから時間が経過した「宿墨」は、加水分解で膠が固着力を失っているため、基本的には使用しない方が良いとされています(薄墨など、特殊な表現をする場合は別ですが)。


「合成樹脂製」の墨汁を使ってみたけれど

合成樹脂は加水分解しないので、膠製の墨汁よりも長持ちすると知り、使ってみることにしました。

最初に使っていた膠性が良かったので、同じような書き心地のものを探しましたが、元々の性質が違うようで見つけられませんでした。何種類かの合成樹脂製を試してみて、こんな印象を受けました。

  • 液に独特のトロミのようなものがあり、墨汁がペン先から出てくるタイミングが、若干遅れる感じがする。なので、ペン先をついつい紙に押し付けてしまい、線が固くなる。
  • また、トロミのせいで線がぽってりし、膠製のような「すっきりとした美しい強弱」を出しにくい。かといって水で薄めると、コシがなくなって滑らかに書けなくなる。

参考:太字のカリグラフィーなら、合成樹脂でも

たまにカリグラフィーをするのですが、以前は、2〜3ミリの字幅のペンと、合成樹脂製の「墨運堂 玄宗」を使っていました。特に問題なく書けていたので、太い字幅であれば合成樹脂でも大丈夫だと思います。


あえて「膠製の墨汁」を選ぶ理由

マンガ家やイラストレーターでも、膠製の墨汁(開明墨汁)を使っている方は多いようです(有名な方では、手塚治虫アンパンマンやなせたかしなど)。

合成樹脂製の方が日持ちし、添加物も少ないのでペン先がサビにくいのですが、プロの方々があえて膠性を選んでいるのは、「書きやすさ・線の美しさ」を優先しているからではないでしょうか。

手塚治虫先生の「マンガの描き方」には、こんな説明も。

「墨汁はちょっと古くなると粒子がくっついて、どろどろに沈殿してしまうから、ぜいたくでもどんどん新しいものととりかえるべきである」

やはり膠製の墨汁は、傷んだらすぐに取り替えた方が良いようです。


3. 墨汁の鮮度を保つ工夫

長い時間練習をした日は墨汁を処分し、あまり練習しなかったら翌日も使う、というようにしたら、良い書き心地を保てるようになりました。

ペン習字用の墨汁は少々高いので、気軽に交換できるよう、開明墨汁の大きめのボトルを使用することにしました。こちらの書き心地も、とても良いです。


墨汁を少量ずつ使うための「インク壺」

ショットグラスとつけペン

少量だけ入るインク壺があれば、処分する量が減ってよいのですが、ペン習字で使いやすいものというと、あまり見かけません。たまたま百均(セリア)で見つけたショットグラスと、WECKキャニスターの蓋の口径が合ったので、それを使用することにしました。

パッキンを挟み、小さめの輪ゴムを上下に掛ければ、密閉度が上がり酸化や水分の蒸発も防げます。

モールドシェイプ 25ml

アイシー プレミアムブラック

コミック用インクですが、ボトルの容量が少ないので、ショットグラスを見つけるまではこれに墨汁を入れて使用していました。中のインクも良い品質なので、相性が合えば、ペン習字にも使えると思います。

キャニスターの本体は「ペン先クリーナー」に

Weckのキャニスター本体を使って、ペン先クリーナーを製作

キャニスター本体の方は、食器洗い用スポンジを切って入れれば「ペン先クリーナー」になります。

作り方
  1. カッターでスポンジをWECKのキャニスターに入る大きさカットし、上半分に縦横3本(9等分)の切れ目を入れます。
  2. キャニスターにスポンジを入れ、好みの分量の水を入れます(指でスポンジの空気を抜きながら入れると、吸水が早いです)。
使い方

柔らかい紙でおおまかな墨をざっと拭き取ったら、クリーナーに浸して、細かい隙間に残った墨を洗い流します。仕上げに紙で水分を拭き取ります。

ペンに付いた墨が乾いて書きづらくなってきたら、クリーナーで洗うと書き味がまた復活します。ちょっと休憩する時にも洗っておくと、墨のこびりつきやペンのサビを防ぎます。


墨汁の鮮度を保つ容器

新しい墨汁のボトルを開封する時に、空気を抜くことができるパックに小分けにすれば、酸化や水分の蒸発による傷みを防いで、より長持ちします。

しょうゆなどの調味料には、空気を抜くタイプがありますが、墨汁もそういった容器のものがあればいいですね。

キャップ付きアルミ袋

容量100mlですが、少し余裕があり、「開明墨汁 400ml」を3パックに分けて入れることができます。墨汁の鮮度を保つには、本体を押して空気をなるべく抜いてからキャップをします。洗って乾かせば、何回でも使えます。

スポイト付きインクボトル

アルミ袋を何度も開けると、中の墨汁が空気に触れる回数も増えるし、本体が柔らかいので、そのままではインク壺に注ぎづらいかもしれません。

スポイト付きのボトルに「数日〜数週間で使い切れる量」を移しながら使うと、アルミパックの墨汁も傷まないし、適量をインク壺へ注ぐのも簡単です。

上記のショットグラスで作ったインク壺だと、このボトルのスポイト1〜2回分で、丁度良い分量になります。


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